いつでもこんばんは、ハイナです。
MOROHA「バラ色の日々」のMV ”として” 発表されたエリザベス宮地の最新作の話をします。
MVとしては長い9分半の作品だけど、映像作品としては集中しているうちに終わってしまう10分弱のフォーマットに、エリザベス宮地自身の恋愛の記録を凝縮されています。特に、端々に映像が入り込んでいるあたりが非常に生生しい効果をもってます。
こんなにプライベートで惚気に満ちたような作品がイタくならないのは、爆発しそうな気持ちをギリギリでコントロールしているMOROHAのVo.アフロの歌声と、硬質で美しいUKのギターの効果が大きく、そしてエリザベス宮地自身の撮影技術と編集技術を総動員して、この作品をパッケージするために腐心した結果かと思います。イタくはないけど胸にズキズキくる痛みがある作品です。
私がいくつかの宮地作品を見る中で、いつも宮地の冷徹とも言えるくらい客観的すぎる視点にはいつも震え上がってしまいます。このMVが始まった瞬間から、この映像の中の恋が終わることを誰しもが感じてしょうがないし、そしてだからこそ美しい笑顔と時間に溢れたこの撮影の日々が愛おしくなってしまう。この幸せな時間を再生された瞬間から終わりが約束されるMVという形式に押し込んだ、創作者としての宮地のクールさがめちゃめちゃ怖いです。
簡単に言えば、自分の恋愛をパッケージにまとめてYoutubeに流すなんて!!!!
この動画が公開された瞬間に、かつての時間は宮地の手元を離れて、個人的な記録ではなくネタ(コンテンツ)として消費され始めます。自分にとってもかつての恋人にとってもこんなに冷酷なことってないとおもうんだけど・・・
でもそれが宮地の凄みだし、それが出来る稀なクリエイターなんだと。
なにより、日本中世界中に満ちあふれている平々凡々な恋人の時間を万人の観賞に堪え得る映像に仕上げている彼の手腕には震え上がる想いです。
たった9分半の有限な時間で味付けされたセンチメンタルな気分だけではなく、確かにいい写真といい笑顔が詰まっている分、余計にすごいんだよな。
結婚式のスライドショーでこんなに美しい写真が並んだらどんなに素晴らしいことだろうと思います。(でもこの恋は終わってるんですよ!!!!!!)
でも、確かにいい写真が沢山残ってて編集する手腕があるとしても、このアーカイブに向き合って、胸をひりつかせながらヒトリで綺麗な仕上げを行ない、公開するまでに至る動機はなんなのか?
もちろんそれは話題作りの為ではないはずです、彼はもう100本以上のMVを撮影しており十分なキャリアを積んでいるので、売名のためにプライベートの映像をさらす必要は全くないです。
それでは、ネタとして差し出してなにをしたかったのかと考えてみると、やっぱりこれは 熱の供養だと思うのよ私は。
エリザベス宮地はこの恋愛とこの時間をちゃんとゴールさせたかったんじゃないかな?
その結果、この美しいMVが仕上がりました。
彼のフィルモグラフィーとしてはベルベットイースター。さよならみなみ。ミヤジネーション。と続く作品群の文脈を更新しているし、映像作家エリザベス宮地が業(カルマ)の深さが存分に存分に発揮されています。そして、映像作品を作るってことの残酷さと美しさをむ き出しのまま担った記念碑になったと思います。
これからYoutubeを通して人々の共感や感情を引き出すことで、この映像を見る人がモヤモヤと抱えているかつての恋愛の思い出を昇華し てくれるような役割を果たしていくんだと思います。
この平凡でいつの時代でもどこの町にでもあるような
丁度この映像に映り込んでいる僕みたいな君みたいな僕と君みたいな
全ての過ぎ去った恋愛を、MOROHAの音楽でゆっくりと溶かして・・・
夜に、風に流していきましょう。
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The lonely night discloses
just a passing breeze filled with memories
of the golden smile that introduced me to
the days of wine and roses and you.
~酒とバラの日々 / Henry Mancini ~
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追記:私は辛くて恥ずかしくて恐ろしくなるからもう絶対見ないけどね!!